3.新しい時代に即した「新しい人権」を

高度情報化社会に対応した人権規定

 近年のいわゆるIT技術の進展により、世界的規模で高度情報化社会が形成されつつあります。日本国憲法が制定されたときは、今日のように大量の情報が瞬時に世界を駆けめぐる時代が来るとは想像もつかなかったことでしょう。

 情報化社会の到来により、「個人に関する情報(個人情報)の保護」及び「政府が有する情報(政府情報)の公開」をめぐって、「プライバシー権」及び「知る権利」といったいわゆる「新しい人権」の内容についても、突っ込んだ議論がなされています。

(1)プライバシー権
  この権利は、はじめは「(国家から)ひとりで放っておいてもらう権利」と把握されていました。どちらかというと自由権的な、消極的なものと理解されていたわけです。しかし、情報化社会の進展に伴い、「個人情報をコントロールする権利(情報プライバシー権)」ととらえられ、とくに行政機関の有する個人情報の保護を積極的に請求していくという側面が重視されるようになりました。
(2)知る権利
  この権利は、はじめは「(国家から)干渉されずに自分の意見をもつ自由」、「情報及び思想を求め、受け、及び伝える自由」と把握されていました。それは「表現の自由」全般を支える基礎的理念と理解されていたからです。
  しかし、情報化社会の進展に伴い、「政府情報の開示を請求する権利」ととらえられ、とくに行政機関の有する情報の公開を積極的に請求していくという側面が重視されるようになりました。

 これらの権利については、「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第58号)」や「行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号)」の施行状況を踏まえ、国民のみなさんのご意見を十分に聞きながら、党内議論を行って、憲法上どのように位置づけるか検討してまいります。


生殖医療・遺伝子技術、移植医療の発達と生命倫理

 近年における生殖医療・遺伝子技術、移植医療の発達には、目を見張るものがあります。

 その中でも遺伝子技術については、科学として、人類に新しい知見を与えたという点ではプラスの影響力があります。しかし、例えばヒトクローンの研究となると、社会的に微妙な問題が生じる可能性があります。生殖医療、移植医療についても、生命倫理上問題になった事例が少なからず見受けられます。

 こうした事態は、日本国憲法がおよそ予想していなかったものです。

 私たちは、生命倫理が、個人の尊厳にかかわる人権問題であり、同時に生命の尊重、自然の摂理と人間の存在の意味にかかわる深刻な問題をはらんでいるものと認識しています。

 この問題については、「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律(平成12年法律第146号)」や「臓器の移植に関する法律(平成9年法律第104号)」の施行状況を踏まえつつ、憲法上どのように位置づけるべきかを検討してまいります。


犯罪被害者の権利

 日本国憲法は、刑事事件の被疑者、被告人の権利は数カ条を費やしてこれを保護していますが、犯罪被害者の保護については一切の言及がありません。

 アメリカでは、1980年代以後から、ようやく犯罪被害者の権利に関する意識が高まり、州レベルで犯罪被害者の権利章典が制定され、州憲法に規定されるようになったということですから、約60年前に制定された日本国憲法がふれていないのも無理からぬことかもしれません。

 しかし、犯罪被害者がその犯罪に関する刑事裁判から疎外されることは、被害の回復を遅らせるとともに、刑事手続に対する不信感、不満感を増加させることにつながります。私たちは、犯罪被害者の迅速で完全な被害回復ができるよう、憲法において、こうした権利を保護することも十分検討に値すると考えています。


環境権・環境保全義務

 ますます深刻化する地球環境問題に対処するため、国際的な環境保護運動が広がりをみせています。我が国でも、天然資源の消費が抑制され、環境への負荷ができる限り低減される循環型社会の形成に向けての取り組みが進んでいます。

 こうしたなか、諸外国において、環境に関する規定を憲法に設ける動きが出てきました。これらの規定を詳細にみると、(1)国民の人権として規定するもの、(2)国民の義務ないし責務として規定するもの、(3)国の義務ないし責務として規定するもの、あるいはこれらを組み合わせるなど、バラエティーに富んだものとなっています。

 日本国憲法が制定されたときには、今日のような形で環境問題が意識されていなかったことから、何らの言及もありません。しかし、環境保全に対する国民の意識の高まりを考えるとき、憲法に環境に関する規定をきちんと位置づけることを検討する必要があります。
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